略奪 episode3 [小説]

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私は動揺していた。
こんなに積極的にこられるのも初めてだから何を話したらいいか・・・
冗談ばっかり言って~と笑い飛ばしたらいいのか・・・分からない。
・・・・・・・優次が耳元で囁いた。
「ねぇ・・・・優子・・ちゃん。二人で抜け出さない?」
一瞬呼び捨てにされたのかと思い優次を見た。すると優次は私の手を取って
「いくよ?」
強引に引っ張られ部屋を飛び出した。
後ろでみんなの声が聞こえた。振り返る余裕もないまま優次に手を引かれ走った。


しばらくすると優次は止まり、手を離した。
私は息が切れ座り込む。
「大丈夫?」優次も息があがっていた。
「何も・・・こんなに・・・走らなくても・・・・」
「早く・・・二人きりになりたかったから・・・」
座りながら優次を見上げる。
「運動会の借り物競争みたいだったな(笑)」
「私は借り物?!(笑)」
「はは!そういう事!」
「ひどい!!(笑)」
二人で笑いあった。

「なぁ・・優子」
「え?!」
「あ~いや・・・ごめん。なんか俺~・・・一目惚れかもしれん・・・」
「ん?誰に?」
私は優次の言ってる意味が理解出来なくて聞き返した。
「いや・・・だから!・・・俺が優子に惚れたって言ってるの!」何となく照れているように見えた。
「何?何言ってるのか分からないんだけど?今日初めて会ったばっかりなのに」
「いや、そうだけど・・・そうなんだけどさ~・・・」
「優次君の思い違いだよ~wそんなのあり得ないって!」軽く流そうとした。
「ん・・・でも俺も正直こんなの初めてだし・・・でも優子の事帰したくなかった。帰したら・・・後悔すると思った。」
優次は今までのチャラ男ではなくなっていた。
「・・・・・・私なんか冴えないただのOLだし・・・ものにしたって得なんてないし・・・」
「じゃあ・・・優子は得したくて人を好きになるのかよ?優子・・・もう少し自分に自信持てよ!」
「だって私・・・地味だし男の人と付き合ったのだって一人しかいないし、私のどこに自信を持てって言うのよ!」
なんだか腹が立っていた。
「私の事何にも知らないくせに・・・言いたい事言わないでよ!」
優次は涙目になりながら話す私をただじっと見つめていた。
「・・・彼氏とだってうまくいってないのに・・・」
ボソっと言うと
「彼氏いんの?」
「いたら悪い?」
ヒートアップする私を尻目に優次は俯いた。
しばらく沈黙が続いた。いてもたってもいられず
「私・・・先帰る」
そう言うと私は優次を背に歩き出した。優次は私の腕を掴むと
「待てって・・・」
「まだ話あるんですか?」
急に敬語になる私に優次はハッっと笑って
「・・・あるよ。・・・彼氏いてもさ~俺関係ないから」
「私は関係あります!」
すると優次は
「だから・・・彼氏がいよーといまいと・・・俺のものにする」
「はぁ?!・・・話にならないので手を離して下さい!」
「俺の事・・・どう思う?」
「・・・・バカだと思いますけど・・・・」
と言うと優次はフッっと笑い私の方へ歩み寄ってきた。
そして私を見つめて
「上等だよwバカで結構!」
と言ってもっと近づいてきた。
チビの私は優次を見上げる。
「な・・・なによ!?」と後ずさりする。
「き~めた!」
「だから・・・なに?」
訝しげな私とは裏腹に優次は上機嫌になっていた。
「誰のものでも関係ねぇ!優子を奪うから」
「!!!」絶句する私。
優次は自信満々に「覚悟しとけ!!」とデコピンをする。
「え?待ってよ!・・・私の気持ちは無視なわけ?」
「優子は絶対俺を好きになるって!」
なんという俺様思考・・・・
言葉を失っていると
「優子ちっせーなぁwそれがまたいいんだけど。キスする時大変だなぁw」
と言って私の頭をポンポンとすると優次が私の顔を覗き込みキスしてきた。
「!!!」
私は顔を背けるが、優次の大きな手で頬を撫でられクィっと戻された。
そしてがっちりと顔を両手で押さえられ唇を合わせてきた。
「や・・・!やめて・・・よ・・・」
「やめない」
何度も何度も軽いキスをしてくる。
抵抗していたキスなのに私もだんだんと優次に合わせてキスをしていた。
うっとりしながら目を開けると優次は私の顔を見ていた。
照れてバッと離れる。
「優子・・・俺腰痛てぇ~・・・」
「どうしたの?」と心配をして覗き込んだ。
「これからキスする時考えねーとダメだなw」
優次は自分の腰をさする。
「もう!今本気で心配したんだからね!」とむくれた。
「でも優子だって首痛くねーの?」と言う。
「痛かった・・・・w」と優次を見上げて笑った。
その瞬間、私の腰に手を回し引き寄せキスをしてきた。
「・・・だろ?」
と言ってさっきとは違う長く甘いキスをした。
優次の舌がゆっくり入ってきた。
でも・・・これ以上は受け入れられないと思いもがいた。
もがけばもがくほど優次は力を入れて私を引き寄せる。
私は逃れられないという快感に少しずつ酔っていった。
いつしか私も夢中でキスをしていた。
優次はフッと唇を離すと私の頬を優しく撫でた。
「なぁ・・・これから俺んち来ない?」
優次が何を言わんとしてるか鈍感な私にでも察しがついた。
「や・・・あのね・・・私・・・今の彼しか経験がないから・・・その・・・良く分からなくて・・・だから・・・」
「ん?・・・俺はそれでも平気だけど?」
「ん・・・私の気持ちが・・・ね・・・」
私は何だか気恥ずかしった。それにすぐに受け入れたら、軽い女と思われるのが嫌で断った。
でも内心は・・・優次をもっと知りたいと思っていた。優次が強引にきてくれたなら・・・・。そんな気持ちだった。
「そか・・・だよねwごめんな。・・・残念だけど今日は帰るか^^」
優次はキスが出来た事に満足したのか上機嫌だった。
「・・・・・・・」黙り込んでしまった私に
優次は私に背を向け駅の方向へ歩き始めた。
その時私の中のモヤモヤが動き出した。

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「何よ・・・」
「え?!」
「優次君ってやっぱり口先だけだったんだね。私をものにするとか好きだとか奪うとか言っておいてただからかっただけじゃない!もう関わらないで!!」
自分でもびっくりするような事を言っていた。
私は踵を返して歩き出した。
優次は私の言葉にびっくりしているようだった。
優次が後ろから何か言っているが聞こえないフリをして歩く。
「待てよ!!」
強く腕を掴まれた。私は優次の顔を見ないで腕を振り払おうとする。
「離して!!」
「・・・・離せるわけないじゃん・・・優子にあんな事言わせて・・・帰せるわけないじゃん!」
私は抱き寄せられた。
「俺は・・・口先だけで言ったわけじゃない・・・傷つけたくないから帰ろうとした。遊びだったらとっくにここで襲ってるww」
「・・・・・・」
優次の言葉が心に突き刺さった。大事に思ってくれてるから今日はやめようとしてくれたんだ。
「俺の気持ち、分かった?」
「うん・・・」
優次はしばらくの間抱きしめてくれた。
「ごめんね・・・私取り乱しちゃって・・・。何か優次君に甘えちゃって。」
「いいよ^^」と頭をナデナデしてくれた。
「甘えたかったら甘えろよ?何言っても受け止めるから^^」
「・・・・うん」
私はたまらずに優次に抱きついた。
「・・・優子・・・」優次も私を抱きしめた。
「あっ!やばいなw」
「どうしたの?」
「さっき今日は帰ろうとか言ったけど、やっぱり我慢出来ないわ(笑)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ねぇ・・・」
「ん?」
「耳貸して・・・」私は手招きをした。
「なに?w」と言って優次は耳を近づけてきた。
「・・・・・えっちしょっか・・・・」
消えるような声で言った。
「え?何?聞こえなかったんだけど?もう一回言ってよ?」とにやけてる。
「えっえっ・・・やだよ!聞こえなかったならいい・・・・」
「いいの?本当に帰るよ?」と私の顔を覗き込み髪をくしゃくしゃっと弄んで言う。
「!!!」
「意地悪!」
「・・・・意地悪したくなるんだよな~w素直じゃないんだからw」
私にそんな風に接してくれる優次をもう好きになっていた。
「優次君の事好きになったらどうしてくれるの~?」
「願ったり叶ったりだけど?優子はどうして欲しい?」
「まだ好きになるとは限らないからねw」
「(笑)いや・・・もう好きになってるから大丈夫!!」
「!!!」
優次には適わない・・・本気でそう思った。
「コンビニ寄っていこ^^」
「うん^^優次君に連れ出されたからお酒飲み損ねたし」
「あはは・・わりぃなwうちで飲みなおそっか^^」
私の手をとって一緒に歩き出した。

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