略奪 episode7 [小説]

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優次を好きだと認識した時点で迷いはなくなってはいたものの
なかなか結論を出せずにいた。
優次にも悟史にも・・・・。ずるずると時間だけは過ぎていきあれから3週間は経っていた。

優次からメールがきていた。
<今日仕事の帰り会えない?>
優次からは毎日数十件メールがくる。何度か会ってはいたもののえっちはあの時だけだった。
<ん・・・会いたいんだけど今日優次に会えるって分かってたらもっとオシャレしてきたんだけど・・・。>
<俺はどんなんだろうと関係ないけどなぁ・・・まぁ優子が嫌なら仕方ないわ・・>
<ううん・・・嫌じゃないんだけど・・・。完璧にして会いたいなって思っただけなの>
<完璧・・・?別に俺優子に完璧求めてないから(笑)>
<・・・ひどい・・・(泣)でも楽になったよ^^会いたいです・・・・>
<ったく素直じゃないよなぁ(笑)>
最近の私は自分でも驚く程明るくなった気がする。自分を出して受け入れられる事が
こんなに心地いいんだなと思っていた。


仕事が終わり優次との待ち合わせ場所に向かっていた。優次はまだ来ていなかった。
辺りを見渡しているとメールがきた。
<時間が出来たんだけど、今から会えないかな?>悟史だった。
どうしよう・・・・携帯を見つめたまま返事を出来ないでいた。
「優子・・・」びっくりして後ろを振り返るとそこには・・・・悟史が立っていた。
「え・・・・なんで・・・・」私はパニックになりかけた。
どうしよう・・・ここに優次がきたら・・・・。
「メール・・・俺からの、だよな?まさかこれから誰かと待ち合わせとか?」と携帯を指差し言った。
私は動揺を悟られないように笑顔を見せて
「あ・・・うん・・・そうなの!か、香織と待ち合わせしてて・・・・」
「・・・そうか・・・なら仕方がないよな。香織ちゃんに宜しく!じゃあまた時間空いたら連絡するよ。じゃあな」
後ろ髪を引かれる事もなく行ってしまった。
なんでいつもこうなんだろう・・・・。彼女の私がここにいるのに平然とまたにしようとあっさりと言える悟史が
憎くなった。
「・・・愛なんか感じられるかっての!」一人ブツブツと文句を言った。
周りから見たら怪しい奴だったに違いない。
その時後ろから後頭部をパシッと叩かれた。
「オイ・・・相当怪しいぞ?」
優次が腰に手を置いて斜に構えて私を見ていた。
「あっ・・・ごめ~ん」と笑って誤魔化したつもりだった・・・・。
優次はキッと私を睨みつけてきた。
「・・・今の・・・彼氏?」悟史が歩いていった方を親指で示した。
「・・・・・ぅん・・・・・」
「何?なんで香織と会うとかいってんだよ!」
「聞いてたの?」
「あぁ・・・・」
「見てたなんて・・・・信じられない・・・!!」
「仕方ないだろ?ついたら優子が男と話してるの見えたから・・・気になんだろーが!」
「・・・・・・・」
「それに・・・愛が感じられないとか・・・・なんとか言ってたよな?何なのアレ?」
「いや・・・それは・・・」
「ソレは?なんだよ!」
怒涛のように浴びせられる言葉と私を軽蔑するような視線に萎縮してしまい声が出ない。
「・・・・そ・・・そんな、怒って・・・・い・・・言われたら怖く・・・・て話せ・・・ないょ・・・・・」
「・・・・・・分かったよ・・・・」優次はため息をついて私から目を逸らした。
チクンと胸が痛かった。
「俺の部屋・・・・行こうか・・・・」
私は黙って頷いた。
それを悟史が一部始終見ていたとも知らずに・・・・・。

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優次の部屋への道のりはとても長く感じる。沈黙のまま無言な優次の後ろをただ見つめ歩いた。
部屋に入ると何も言わず優次はキッチンに立った。
「お、お邪魔・・・・します・・・・」
緊張しながら中へ入った。
優次は淹れてコーヒーをテーブルに置いた。
「あ・・・ありがとう・・・・」
私はコーヒーを一口飲んだ。
・・・・・優次はこんな時でも私の好みの味のコーヒーを淹れてくれてる・・・・。
私は胸が締め付けられる思いだった。
「ごめんね・・・・」
優次ははぁ~とため息をついた。
「・・・怒ってるよね?」
「あぁ・・・少しイライラしてる・・・・」
そういうとタバコに火をつけた。
「あのね・・・別に優次を傷つけるつもりはなくて・・・だた・・・」
優次はタバコの煙をふぅっと吐き出しながら
「ただ・・・?なに?」私を見た。
「ただ・・・悟史にはあの場所で言いたくなかった。きちんとしたかった・・・悪気はなかったの」
「じゃあ・・・なんで早く言わない?」
「・・・・・・・」黙る私に優次は荒くタバコをもみ消し睨みつけ
「・・・バカにしてんのか?」
ドクンと鼓動が早くなる・・・怖い・・・。
「ば・・・バカに・・・なんかして・・・ないよ?きっかけがなかったの・・・・。」
優次は苛立ちを隠さないまままたタバコに火をつけ、ライターを投げるようにテーブルに置いた。
「ふぅ~ん・・・・で?彼氏とも別れないで俺とも付き合っちゃえ、みたいな?」と鼻で笑った。
「そっ・・・そんな事はしない・・・・どうしてそう思うの?」
「ん?どうしてもこうしても、俺はこれでもけっこう待ったんだぜ?」
「・・・私は私なりにケジメをつけたかったの。」
「優子のケジメってなに?」優次はタバコを持ったまま額に手をついて言った。
「悟史と別れて、優次と付き合うって事」
「俺は優子の言うケジメをずっと待ってたんだよ!分かんないの?」
「・・・言うタイミングがなくて・・・」
「タイミングがなかったら、別れないつもりなのか?」3206288700_fb1f78cf10_m.jpg
「別れるよ・・・」
「じゃあ今すぐ別れてこいよ!!」
ガシガシとタバコを消すと私の腕を掴んで立たせた。
「やぁ・・・痛い・・・!」
「・・・・・ご、ごめん」
優次は手を離すと私を背にして座った。
「・・・・俺・・・不安なんだよ・・・優子の事になるとバカみたいに不安になっちまう・・・・」
俯く優次を見て初めて気づいた。
私の優柔不断が・・・優次を傷つけていると知った。
「・・・・ごめんなさい。本当にごめんなさい」
私は優次の肩に触れた。優次は何も言わず座り込んでこちらを見ない。
「今から・・・話をしてくるから。」
「っ!・・・・優子!」
私の腕を握り切ない顔で見てくる。
「大丈夫!優次のお陰で強くなれた。頑張ってくるね。」
優次を不安にさせてまで私は弱くなっててはダメだと思った。
部屋を出ようとドアを開けると・・・・・・。
そこには悟史が立っていた。
「・・・・っ!なんで・・・?」
呆然としている私の後ろで優次が呼びかける。
優次もただ立ち尽くしている。
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「こんばんは」悟史は冷静に言い放つ。
「話があるんだけど、二人に」
私達は頷くしかなかった。
突然のチャンスに自分の決心が鈍っていく・・・・。
「で・・・悟史さんでしたっけ?私達の事できたんですよね?」
口火を切ったのは優次だった。
ちらっと優次に目を向けると優次は真剣な眼差しを悟史に向けていた。
「実は・・・優子が大変お世話になっていると聞きまして・・・」
「ありがとうございました。これからはこのような事はやめてください。」
「・・・・・・・」優次は捲くし立てられ何も言い返せない。
やっぱり優次でも悟史には適わないのかー・・・・。
「あ・・・あのね私優次を好・・・・・」
「優子は黙ってて!」悟史は私の言葉を遮るように言った。
すると突然優次が笑い出した。
「なに?」私は問いかける。
「・・・・あんたいつもそうなんだろ?」
「・・・・何が?」
「優子がちゃんと話せない理由ってのが分かったよ・・・(笑)」
「何が言いたい!何が話せない?」
「何でもだよ!優子の話最後まで聞いた事あんのか?いつも途中で遮ってんじゃねぇのかよ!」
優次は私の方を見るとさっきまでの冷たい視線を送っていた優次じゃなかった。
「・・・優子・・・こっちこい!」
優次は私を自分の隣に座られると
「・・・・何がしたいんだ?」
頭のいい悟史なら分かっているはずだ。
「別れて下さい!!」優次は悟史に頭を下げた。
「・・・・・・・」悟史は何も言わない・・・・。何を考えてるか分からない。
「お願い!!私と別れて!!悟史と私は最初から合わなかった」
「お前が・・・お前が優子から離れろ!邪魔だ!」悟史は急に怒鳴った。
ビクッとした私の手を優次はぎゅぅぅぅと握ってくれた。
「でも・・・私は優次が好きなの!!もぅ優次じゃなきゃダメなの!」
「・・・・・・・・」
悟史は黙った。
「悟史・・・・別れ・・・・」
「今のは・・・・・」
「えっ?」
「今の事はなかった事にするから・・・・」
「・・・・・・・・えっ」
「なかった事にしてやるから、戻って来い!!!」
悟史は立ち上がると私の手を掴んで強引に引っ張りあげられた。
「やだ・・・・離して・・・・!!」
私は体勢を崩してテーブルに手をついた。
その時優次が静かに引っ張られてる私の手を握り
「いやだっていってんだろ?」
悟史から引き離してくれた。
「忘れるから・・・忘れるから・・・」悟史は座り込んだ。
忘れるからと言われても私の気持ちに揺るぎはなかった。
「・・・ごめん・・・戻れない・・・・」
「ダメなのか・・・?」
「一緒にいたいのは悟史じゃない。優次なの」
・・・・・・・・・・・・・
「お前・・・・抱いたのか?」
「知ってどぅすんだよ?」
「嫌いになって別れた方が・・・痛手が少ない・・・・」
「・・・・・お前・・・・優子の事マジで好きだったんだな・・・・」
「あぁ・・・抱いたよ」
私は肩に力が入った。
「寝取られるなんてな・・・・」ハハっと笑って俯いた。
「お前・・・そんなに好きだったなら大事にしなかった?」
「・・・・・好きでそうなったわけじゃない!!」
悟史は優次に食ってかかった。でも優次は冷静だった。
「言い訳にすぎねーよ!優子はお前に愛想が尽きたんだよ」
「・・・・まぁ・・・精々浮気されないよーに気をつけろ」と悟史が言った。
「俺はおめーと違って浮気されるよーな事はしねーよ」
「・・・・俺が悪いのか・・・」
「そーだよ(笑)まだ分かんねーの?」
「・・・優次には・・・素の自分を見せられる・・・それを優次は受け入れてくれるの。
悟史にはそれが出来なかった。・・・優次といると居心地がいいの」
自分の気持ちに素直になって話をした。
優次は私の言葉に照れたように笑った。
私もそんな優次を見て笑った。
悟史はそんな私達を見て
「そんな女・・・お前にくれてやる!俺には・・・合わない」
そういうと部屋から出て行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくの沈黙の後、私はほっとして足を崩してため息をついた。
優次は私を見てゲラゲラと笑い出した。
「なっ!なによ!」
「あ~いや・・・しんどそうな顔してたから」
「当たり前でしょ?」
ちょっとふてくされてぷいっと横を向いた。
「わりぃ・・・でも・・・・」
「でも?」
「お疲れさん・・・・」
私の頭をナデナデした。私は急に泣けてきた。
「・・・・うぅぅ・・・笑い事じゃないよ・・・・」
「ん・・・そだな」
「でも・・・今言わなかったらまた優次を傷つけるから・・・」
「ん・・・ありがとな」
優次は私の顔を持ち上げ真っ直ぐに見つめて
「まじ、すげー伝わったわ」
「ねぇ・・・・私と付き合って下さい!」
優次は笑ってばかり。
「もう・・・知らないんだから・・・・」
「・・・嬉しくて笑い止まんねぇ~」
「ばっかみたい!!」
笑い転げる優次を放置した・・・・。
「・・・まさか・・・私が優次に堕ちるか、からかってたってわけじゃないでしょうね?」
「おめーの方が馬鹿かっ!」とチョップしてきた。
「じゃあ何なの?」
「ん・・・・略奪大成功!!」
「えっ?!」
私を抱き寄せると
「もぅ・・・俺のもん!誰にも渡さない・・・」
強く抱きしめられて幸せな気持ちになる。

「・・・・愛してる」
「・・・・私も・・・」
私達はベッドの海へダイブして二人で大きな波を超えた・・・・・。
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-終わり-

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